動物の仲間になりたかった少年が、超人と呼ばれる学者になるまでの波瀾万丈の半生をみずから語る。
犬や猫、虫や小魚の身のこなしに驚愕し、縁の下を這い、屋根から屋根を跳びまわり、電柱をかけ登りたいと日夜修業に明け暮れた少年時代。スズメの鳴き声を一羽一羽聞き分けようと観察を繰り返し、一定の場所を一定の高さで飛ぶアゲハ蝶の交通地図を作る。それらはすべて自分自身がスズメや蝶になった時のためという「明快な妄想」と、それを支えるための「馬鹿げた努力」であった。このような練習の積み重ねが高校時代の器械体操で大きく開花するも、著者は別の道を選ぶ。その後、大学でのインドネシア語やハンガリー語、アラビア語、中国語などのさまざまな外国語の学習、サークルでの新しい仲間との出会いなどが未知の世界への欲求をさらに大きなものにしていく。そんなときに、見知らぬ学生から声をかけられた「アフリカ大陸縦断隊」に加わり、一か月以上もの船旅の末、アフリカの地に立つ。こうして、一人の型破りな文化人類学者が生まれる。単行本未収録「アフリカ縦断」紀行や著者の幼年期、高校や大学時代の写真などを増補した、没後十年記念出版。